①はこちらです。
⑦風疹抗体
妊娠中に風疹にかかると、先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが産まれる場合があります。
風疹は、飛沫感染から感染し、赤ちゃんには胎盤から感染します。
赤ちゃんが先天性風疹症候群(CRS)にかかると、目や心臓、耳に異常が生じるとされています。
風疹抗体価の正常値は、32倍、62倍、128倍となっています。
8倍未満、8倍、16倍は抗体価が低いとされます。
また、256倍以上は抗体価が高く、風疹に感染している可能性があります。
抗体価が低い場合は、今後風疹に感染する可能性が高くなります。
しかし、妊娠中風疹ワクチンは打つことができないため、感染しないように気をつけることが必要です。
妊娠している場合は、家族にワクチン接種をすすめましょう。
産後早期にワクチンを打ち、今後の感染リスクを減らす必要があります。
抗体価が高い場合は、風疹になっているかの精査をもう一度します。
感染していたら、対応について病院の指示に従いましょう。
参考文献:病気がみえるvol.10 産科 第3版 p204-205
風疹感染は現在、流行してはいません。
抗体価が低いからといって、感染するわけではありません。
しかし、感染した時のリスクを考え、妊娠20週までは感染に気をつける必要があります。
なお、妊娠20週までに感染すると、先天性風疹症候群の赤ちゃんが産まれる可能性が高くなります。
直近では、2018年に流行しています。
リスクを知り、注意して行動することが必要です。
妊娠前に風疹抗体価を検査し、値が低ければワクチンすることが予防策です。
参考資料:厚生労働省HP(風しんについて)
⑧梅毒
妊娠している人が梅毒にかかると、赤ちゃんに先天性梅毒が起こります。
梅毒は性行為で感染し、胎盤から赤ちゃんに感染します。
先天性梅毒の症状としては、水頭症や皮疹、難聴、肝臓肥大等がおこります。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p217
PRP法、TPHA法2種類で、梅毒を検査します。
PRP法で陽性かつTPHA法で陽性だと、梅毒に感染しています。
感染してると、早期に抗生剤治療が必要となります。
過去の感染歴、治療歴があると、PRP法では陰性がみられ、TPHA法のみ陽性がみられます。
つまり、一度梅毒にかかると、感染歴はわかります。
治療歴があるかどうかは大事です。
治療したことがある方は、速やかに申告しましょう。
- PRP法で陽性→現在梅毒に感染している
- TPHA法で陽性→感染歴がある(治療しても陽性のまま)
参考資料:東京都感染症情報センターHP(梅毒 Syphilis)
妊娠前に性感染症にかかってないか、男性側も性感染症になってないかを知っておくことが、予防策です。
⑨HTLV-1抗体
HTLV-1は、成人T細胞白血病ウイルス1型のことです。
妊娠30週までに、スクリーニング検査を行います。
性行為感染、母乳感染が主となり、感染します。
感染成立後に、時間をかけて発症します。
後に白血病になる可能性があります。
つまり、検査をしなければ、無症状のまま感染が継承されます。
しかし、検査が推奨されているため、妊娠している人に陽性が確認されると、赤ちゃんに感染させないように予防策を講じることができます。
母乳をあげず、ミルク栄養にすることが一番の予防法です。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p214-215
⑩HIV抗体
HIVは、主に性感染症で発症します。
母子感染のリスクもありますが、現在発症は少ないです。
HIVは最初は無症状ですが、ウイルス量が増えていき、特定の病気を発症すると、AIDS(後天性免疫不全症候群)と診断されます。
HIVの発症がわかると、抗HIV薬を飲み続け、ウイルス量を減らす必要があります。
早期発見、早期治療で、昔よりも長く社会生活を送ることができるようになっています。
参考資料:厚生労働HP(知っておきたい 性感染症の正しい知識)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202308_00001.html
HIV感染妊婦には母子感染予防に、
- 抗HIV薬を飲み続けること
- 帝王切開術による出産をすること
- 母乳ではなくミルク栄養にすること
- 産まれた赤ちゃんに、抗HIV薬を一定期間飲ませること
をする必要があります。
ほとんどの赤ちゃんが、HIV感染の母子感染を防ぐことができます。
参考文献:産婦人科診療ガイドライン産科編2020
p.320 CQ610 HIV感染の診断と感染妊婦取り扱いは?
⑪血糖
赤ちゃんは、糖分を必要とし、大きくなります。
しかし、病的に血糖が上昇している状況があると、妊娠糖尿病と診断され、血糖の管理が必要となります。
妊娠糖尿病になると、赤ちゃんが巨大児、それにともなう肩甲難産(肩幅が広くなり肩から先が分娩時でれない)、子宮内胎児死亡、出産後の呼吸障害が生じるリスクが高くなります。
妊娠初期、中期(妊娠24-28週)に、血糖検査を行います。
妊娠初期に、血糖が95mg/dL以下もしくは100mg/dL以下であると(基準は産院による)、検査はクリアします。
妊娠中期には、50gOGTT(50gのブドウ糖が含まれた飲料を飲んで血糖の値をみる検査)を行います。
1時間後に、血糖が140mg/dL以下であれば、検査クリアです。
血糖の値が高い場合は、75gOGTT(75gのブドウ糖が含まれた飲料を飲んで血糖の値を見る検査)を行います。
- 空腹時血糖値≧92mg/dL
- 1時間値≧180mg/dL
- 2時間値≧153mg/dL
の場合、妊娠糖尿病と診断されます。
血糖が高い場合は、妊娠中の明らかな糖尿病と診断されることもあります。
また、すでに糖尿病と診断されている女性が妊娠すると、糖尿病合併妊娠となります。
食事療法、血糖測定(1日に数回)を行い、それでも高い値が出る場合は、インスリン療法が必要になります。
痩せている人であっても、家族が糖尿病であれば、妊娠糖尿病になる可能性も高くなります。
肥満であると、リスクは高くなります。
参考文献:産婦人科診療ガイドライン産科編2020
p22 CQ005-1妊婦の糖代謝異常スクリーニングと診断のための検査は?
⑫トキソプラズマ抗体
トキソプラズマ症は、生肉を食べたり、猫の糞などを触わったりすることにより、経口感染します。
妊娠している人が初めて感染すると、赤ちゃんにも胎盤から感染する可能性があります。
感染すると、10%に先天性トキソプラズマ症が起きる可能性があります。
感染が疑われる場合には、抗生物質の投与を行います。
先天性トキソプラズマ症の赤ちゃんは、脳や目、皮膚、肝臓等に異常をきたします。
予防策としては、妊娠中は生肉を食べないこと、汚いものを触ったらすぐに手を洗うようにしましょう。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p219
⑬子宮頸部細胞診
子宮頸がんの検査です。
子宮頸がんの約3%が、妊娠初期検査で診断されています。
NILMは結果が陰性であり、正常です。
それ以上の結果は、精査をすることになります。
予防策としては、定期的な子宮頸がんの検診を受け、早期発見早期治療が重要です。
また、適切な時期に予防接種を受けることが重要です。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p186
⑭クラミジア
クラミジアは性感染症であり、性行為によって感染します。
子宮頸管炎を起こしますが、多くは無症状です。
炎症を起こしているため、流産や早産の原因となります。
出産する時に、赤ちゃんが産道で感染を起こす可能性があるので、クラミジアがわかったら、抗菌薬で治療を行います。
クラミジアに感染した赤ちゃんは、新生児結膜炎や新生児肺炎を起こすことがあります。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p219
⑮B群溶血性レンサ球菌(GBS)
B群溶血性レンサ球菌は、膣の常在菌です。
全妊婦の10-30%から検出されます。
妊娠33-35週に検査が行われます。
出産する時に、産道から感染する可能性があります。
大半の赤ちゃんは感染しませんが、1%の赤ちゃんがGBS感染症を発症します。
赤ちゃんが感染すると、予後は不良です。
肺炎、敗血症、髄膜炎を引き起こすリスクがあります。
治療としては、GBSを保菌している場合は、分娩中に抗生剤を点滴します。
前児がGBSを発症していた場合や、GBSの保菌状態が不明の場合も、抗生剤を点滴します。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p218
⑯超音波検査(エコー)
妊娠初期から後期まで行われる検査です。
妊娠初期は、経膣エコー(膣からプローブと呼ばれるエコーの機械を入れて検査)をして、正常妊娠をしているか、赤ちゃんが生存しているか、週数はどのくらいなのか等をみます。
妊娠中期からは、経腹エコー(お腹にエコーを当てて検査)で、赤ちゃんの発育や形態、羊水量、胎盤の位置をみます。
また、経膣エコーでは、子宮頸管長の長さを見て、切迫早産傾向(正常に産まれてくる時期より早く産まれそうになること)を確認します。
胎児形態をみることは、胎児スクリーニングとも呼び、大切な検査です。
形態異常によっては、適切な出産方法を選択したり、産まれた後の治療の準備を行ったりすることができます。
最近は、3Dエコーができる病院やクリニックも増えており、立体的な胎児を見ることができます。
参考文献:病気がみえる vol.10 産科 第3版 p50-56