1.風疹とは
風疹とは、発疹や熱、リンパが腫れる病気です。
飛沫感染で、感染が拡大します。
日本では、2004年、2012-2013年、2018年に流行しています。
風疹排除を目的に、国を挙げて取り組んでいるところです。
現在、流行はしていない状況です。
参考文献:産婦人科診療ガイドライン 産科編2020
p304 CQ605 妊婦における風疹罹患の診断と児への対応は?
2.妊娠中に感染すると危ない
妊娠中に風疹にかかると、先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが産まれる場合があります。
赤ちゃんには、胎盤から感染します。
赤ちゃんが先天性風疹症候群(CRS)にかかると、目(白内障)や心臓(先天奇形)、耳(難聴)に異常が生じるとされています。
風疹抗体価の正常値は、32倍、62倍、128倍となっています。
8倍未満、8倍、16倍は、抗体価が低いとされます。
また、256倍以上は抗体価が高く、風疹に感染している可能性があります。
抗体価が低い場合は、今後風疹に感染する可能性が高くなります。
しかし、妊娠中、風疹ワクチンは打つことができないため、感染しないように気をつける必要があります。
妊娠している場合は、家族にワクチン接種をすすめましょう。
産後早期にワクチンを打ち、今後の感染リスクを減らす必要があります。
抗体価が高い場合は、風疹になっているかの精査をもう一度します。
感染していたら、対応について病院の指示に従いましょう。
参考文献:病気がみえるvol.10 産科 第3版 p204-205
3.妊娠希望の年齢層の風疹抗体価は低い?
2000年4月2日生まれ以降の風疹ワクチン接種は、大人になるまでに2回行われています。
2000年4月1日生まれ以前は、1回しか風疹ワクチン接種を行っていない可能性が高いです。
風疹ワクチン接種を行ってない世代もあります。
妊娠を希望する年代の人たち(おおむね20-40歳台)は、十分な風疹抗体価がない可能性があります。
参考資料:こどもとおとなのワクチンサイト(ワクチンと病気について)
特に、男性の風疹抗体価が低い可能性が高く、男性から妊婦に感染させていた症例が多い傾向にあります。
妻が妊娠していて、かつ妻の風疹抗体価が低い場合は、夫も風疹抗体価を検査をした上、低ければ風疹ワクチンを打たなければなりません。
同居家族も同様です。
女性は、ブライダルチェックや妊娠初期の検査で、初めて抗体価が低いとわかる人もいるでしょう。
また、ワクチンを2回打っても、抗体がつかない人もいます。
自治体で、風疹抗体価を調べる検査や風疹ワクチンの助成、クーポンがでているところがあります。
自治体のホームページから検索をしてみると良いでしょう。
4.風疹抗体価が低い妊婦は大丈夫なの?
妊娠初期の検査で、風疹抗体価が低いことを確認した方もいるでしょう。
風疹抗体価が低いまま妊娠、出産した方は、多くいます。
妊娠20週までに風疹に感染すると、先天性風疹症候群(CRS)に感染した赤ちゃんが産まれる可能性が高くなります。
そのため、その期間は人混みを避けたり、同居する家族に風疹ワクチンを受けてもらったりする必要があります。
私が臨床で働いていたときは、数か月に2、3人、風疹抗体価が低い妊婦がいました。
その妊婦から産まれた赤ちゃんは、先天性風疹症候群にかかってはいなく、健康な経過をたどっていました。
皆が皆、風疹抗体価が低いからといって、風疹にかかるわけではありません。
また、リスクがある妊婦とみなされるわけでもありません。
妊娠期間中に、インフルエンザに感染したり、新型コロナウイルスに感染したりするケースの方が、多かったです。
一生のうちに風疹にかかる可能性の方が、低いと思われます。
過度に心配しすぎる必要はありませんが、妊娠20週までは、風疹にかからないように気をつけた方が良いです。
5.麻しんって流行ってるの?
麻しんが流行しているというニュースが、今年(2024年)報道されていました。
麻しんとは、高熱、全身の発疹、せき、鼻水、目の充血など、肺炎や中耳炎になることがあり、重い脳炎を発症する病気です。
先進国であっても、1000人に1人が死亡すると言われています。
飛沫感染や接触感染で、感染します。
ヨーロッパにおける症例報告数は、前年度の30倍以上に急増しています。
海外からの輸入例があり、感染が広がる可能性があります。
日本も2月から感染者が見られ始め、3月中旬までの感染者数は21人に増えています。
2023年にも一時、週に5人、感染者がいた時がありました。
それ以前は、週に1人以下の感染者数だったことを考えると、今年は流行する可能性があります。
参考:国立感染症研究所HP
麻しん発生動向調査:2024年 第17週 ('24/05/01現在)
https://www.niid.go.jp/niid//images/idsc/disease/measles/2024pdf/meas24-17.pdf
麻疹 発生動向状況 速報グラフ更新履歴
https://www.niid.go.jp/niid/ja/hassei/1838-measles-sokuhou-rireki.html
妊娠中に感染し、胎児に感染すると、流産や早産の原因となることがあります。
地域で麻しんの流行が見られた場合は、なるべく外出を控えるなど、感染しないように注意しましょう。
参考:東京都福祉局HP
母子感染について~妊娠中・これから妊娠を考えている方へ~
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/kenkou/boshikansen.html
6.麻疹もワクチンを打つべき?
風疹、麻疹のワクチンは、生ワクチンといった種類のワクチンです。
生ワクチンは、ウイルスの毒性を薄めて作られたワクチンのため、胎児への移行の可能性があり、妊婦は使用できません。
妊娠していないときに生ワクチンを接種した場合、原則2か月は避妊をしなければなりません。
男性のみが生ワクチンを接種した場合、避妊の必要はありません。
麻疹、風疹の混合ワクチンは、MRワクチンと呼ばれるものです。
風疹予防だけの風疹ワクチンもありますが、風疹抗体価が低かった場合、麻疹のワクチンも接種率が低い年代である可能性が高く、MRワクチンを接種することをおすすめします。
風疹抗体価を調べた場合、病院やクリニックでMRワクチンを勧められる傾向にあります。
7.風疹抗体価が低いとわかったが、ワクチンを接種して2か月避妊したくない方へ
妊活中、もしくは不妊治療中の方は、2か月も避妊することが長いと感じる方もいるでしょう。
できればワクチンを接種せずに妊娠したいと考えている方もいると思います。
私がそうでした。
私は、結婚当時にブライダルチェックをしましたが、風疹抗体価を調べませんでした。
2回ワクチン接種をしたことがあったので、大丈夫だと思っていました。
しかし、妊活中に検査をすると、風疹抗体価が低く出てしまいました。
不妊クリニックに何度か足を運んでいた時期であり、1か月も無駄にはしたくありませんでした。
不妊クリニックで検査をし始めており、次の受診日に風疹抗体価を申告した際(助成があるクリニックで受けたため)できればワクチンを打ちたくないと医師に伝えました。
「2回接種で抗体がつかないなら、打たなくても良いですよ」
と医師に言ってもらえ、妊活を継続することにしました。
不妊クリニックで治療前の検査段階(風疹抗体価がわかってからすぐ)で、妊娠が判明しました。
風疹は気をつければ感染しないだろう、流行してないし大丈夫だろうと思っていても、風疹抗体価が低いままで妊娠したのは、怖いと感じました。
幸か不幸か、悪阻が酷く、ほぼ20週まで不必要な外出をしなかったのは良かったのかもしれません。
風疹に感染する可能性が高いことは、今でも心配要因のひとつでもあります。
妊活中に風疹ワクチンを打つかどうか、2か月を無駄にしたくないか、心配要因を減らすかどうか、決めるのは本人です。
ただ、その2か月の賭けに出るのは、強引かもしれません。
2か月で妊娠しない可能性もあります。
医師に相談し、どうしたいか決めても良いかもしれません。
私が風疹抗体価が低いのは、前回の接種から年数が経っていたからだと思います。
出産したら、風疹ワクチンもしくはMRワクチンを接種したいと思います。
8.まとめ
- 妊娠中に風疹にかかると、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性がある。
- 妊娠している妻が風疹抗体価が低い場合は、同居する家族も風疹抗体価を調べ、値が低ければ、ワクチンを接種する必要がある。
- 風疹抗体価が低い場合は、妊娠20週までは感染しないように気をつける。
- インバウンドで、例年よりも麻疹患者が増えている。
- ワクチンを摂取するなら、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)を検討する。
- 妊活中のワクチン接種は、医師に相談しても良い。